毎年何気なく飲むお屠蘇であるが、いつも気になることがある。それは、屠蘇という言葉である。「屠」は、漢和辞典を引くと「ほふる、ころす」という意味であり、「蘇」は「よみがえる、生きかえる」という意である。
正月というめでたい時に、蘇生を殺すという言葉はあまりに似つかわしくない。そこで、いろいろ調べてみると、中国・明の時代に李時珍の著わした「本草綱目」という有名な本草書にその由来が載っていた。要約すると、次の通りである。
「屠蘇酒というのは華陀(かだ)という古代の医者の造った処方で、元旦にこのお酒を飲めば、疫病や一切の不正の邪気を避けることができる。肉桂(にっけい)、山椒(さんしょう)、白朮(びゃくじゅつ)、桔梗(ききょう)、防風(ぼうふう)などの生薬を三角に縫った袋に入れ、お酒に一晩浸し、一家こぞって東に向かい、年少者から、年長者の順に屠蘇酒を飲む。 毎年こうして、元旦に飲めば、一代の間、無病であるといわれている。
ところで、蘇とはて鬼(きき)という鬼の名で、この薬酒がこのような邪悪を葬るというところから名がつけられた。」
これで胸の支えがとれ、ゆったりと屠蘇酒を味わうことができそうだ。
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屠蘇について