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風邪と葛根湯について

風邪と葛根湯について

風邪と葛根湯について

”風邪に漢方葛根湯”といわれるほど、風邪に葛根湯(かっこんとう)はよく知られています。
落語にもやぶ医者の代名詞として葛根湯医者が出てきます。
しかし、厳密には風邪には各種の漢方方剤が用意され、それぞれ使い方が異なっています。
体格、体質に応じてこれらの方剤を使い分けねばなりませんが、実際は風邪の治療はなかなか難しいのです。
今回は、葛根湯を題材にして風邪について解説しましょう。

風邪の発症とは

風邪は、普通、飛沫感染により伝染します。
上気道の粘膜で増殖したウイルスが、くしゃみ、咳によって、飛散する気道分泌物の小粒子に含まれて、空気中に浮遊し、他の人の上気道に進入し、そこで感染を起こします。
数日の潜伏期の後、頭痛、発熱、悪寒、関節痛などとともに、次第に鼻炎症状から咽頭痛、気管支症状へと移行します。膿性の鼻汁や喀痰は二次感染を起こしています。
ウイルスに効く抗生物質は無いので、治療は対症療法になります。
風邪の病態には、多くの因子が関与しています。第一に、宿主の感染抵抗力があげられます。つぎに、普通感冒からインフルエンザまで、ウイルスの毒力が問題になります。
また選択された薬剤の影響も大きく、環境も無視できません。このように風邪と一般にいっても、宿主-ウイルス-薬剤-環境の関連で考える必要があります。
宿主側の防御機構には次にあるような体制が備わっています。

(1)物理的防壁:ウイルスが人の体内に侵入する際、宿主側の最初の防壁は皮膚や、口腔、咽頭、気道などの粘膜です。
(2)生理学的防壁:粘液は殺菌作用のある分泌物を産生し、ウイルスを捕捉し、線毛輸送により、排出する。好中球、マクロファージは食菌作用を営み、全身の免疫ネットワークに異物の侵入を警告します。
(3)免疫学的防壁:ウイルスに対する特異抗体を産生する液性免疫と、免疫細胞自体が防衛する細胞性免疫の両者により、免疫学的防壁を築いています。

風邪の治療・養生の基本

強力なインフルエンザでも、罹る人と罹らない人がいます。インフルエンザ自体は変わらないので、この差は防衛機構のどこかに欠陥があるかないかによって違います。休養や睡眠を充分とることは、免疫力を増強しますが、過労やストレスが多いと免疫力が低下し、風邪にかかりやすくなります。
このストレスがさらに過剰になると、免疫力は一層減弱し、癌の発生すら許してしまうことになるでしょう。うがいをすることも物理的防壁を増強するので、風邪予防の第一歩です。
風邪にかかったとき、精をつけようと肉や油ものを多くとる人がいますが、あまり感心しません。体は全勢力を使い、ウイルスと闘っているわけですから、消化力にあまりエネルギーを費やさない方が良いのです。
熱いお粥や温野菜を中心にした食事がよいでしょう。

葛根湯が生体防御機能を高めるしくみ

風邪に対し、葛根湯がなぜ良いかについてはよく分かっていません。
風邪にかかると、悪寒があり、続いて発熱頭痛などが起こります。
このような急性期に葛根湯を一服あるいは数服で半日程度で軽快することにしばしば遭遇します。
これはどういうことでしょうか。

体温調整中枢は大脳の視床下部にあって、熱産生中枢と熱放散中枢があります。
この両者は産熱と放熱のバランスをとり、一定の体温が保たれるようになっています。インフルエンザウイルスなどに感染しますと、防衛のためインターフェロン(INF)が出てきます。風邪は粘膜面での感染なので、粘膜面にIFNが少量出ているだけでよいのですが、結果的には全身性にIFN活性が高くなります。
IFNの増加が体温中枢のバランスを崩し、新しく高いレベルに体温中枢をリセットし、熱産生>熱放散を起こし、発熱すると考えられます。この発熱も生体防御の一環なのですから、むやみに熱を下げれば良いというものでもありません。

葛根湯は、風邪ウイルスを攻撃し、同時に熱放散中枢を刺激して、セットポイントを平熱近くに下げ、この新しいセットポイントに向けて、全身の熱の放散機構を働かせます。
中でも発汗は強い熱放散現象です。これらをすばやくこなすのが、漢方薬の良い部分です。
この発汗には、強いエネルギーを必要とするので、虚弱者には適当でないでしょう。

葛根湯を使用するコツ

葛根湯を活用するには、桂枝湯は(けいしとう)を理解する必要があります。

桂枝湯 体力の弱い人(虚証)に使う漢方薬の代表であり、全漢方方剤の基本骨格を形成しています。汗かきの傾向で脈が弱い。桂枝湯は発汗作用が弱いので、熱いお粥を啜ったり、布団で覆ってジトッと汗をかかせる必要があります。
葛根湯 体力中等度以上の人(実証)に使う漢方薬の代表です。葛根湯に発汗作用の強い麻黄や葛根が配剤されています。桂枝湯との差は本方が汗をかかないことです。脈の緊張は良く、後頚部、後背部の強い凝りを特徴とします。
症例 51才、女。身長153cm、体重55kg。高血圧で加療中であった。2週間前より頭痛があったが、今朝より、38.3℃の発熱が出現。寒気がある。のども痛み、鼻水が出る。肩は凝っているが、いつも凝っているという。汗はかいていない。脈の緊張はよい。頭痛、発熱、無汗、脈緊より、ツムラ葛根湯7.5g投与。葛根湯2服(5g)飲んだら汗をかき、解熱した。頭痛、咽痛なし。